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漢字は多い?少ない?

  • okag62
  • 2020年9月7日
  • 読了時間: 4分

漢字を勉強している皆さんにとっては、勉強してもしても、まだ知らない漢字があるということに、時には絶望的な気持ちになったりするかもしれません。それとも、漢字好きの人々にとって新しい漢字との出会いは、逆にワクワクすることでしょうか。


そもそも、漢字は多いのでしょうか、それとも少ないのでしょうか。


ある記事によると、「大漢和辞典」におおよそ5万字強の漢字が載っているそうです。実際に日常的に使う漢字数は、大修館書店の情報によれば、2500字程度で全体の99%、4200字程度で、99.9%の、日常的に目にする漢字をカバーできると書かれています。母国語がアルファベットを使っている人から見れば、50以上の文字を覚えなくてはいけないという時点で、既に多いと思うのは無理もないことです。


しかし、今日私がお話したいと思ったのは、こういう実際の漢字が何文字あるかということではなく、言葉と漢字の組み合わせの問題です。


元々日本語には「やまとことば」というものがありましたが、表記する手段がなかった、そこに中国から漢字がもたらされた、と一般的には言われています。例えば土が大きく盛り上がった地形があって、それを日本人は「やま」という言葉で呼んでいて、そこに「山」という漢字と「サン」という中国語(っぽい)読み方が入って来たので、今でも訓読みと音読みがあると言われています。


ところが、そこには言葉と漢字のギャップがあったと、私には思えるのです。


例えば、JLPT N1レベルの難読訓読み、「偏る」は「かたよる」と読みますが、これは「片寄る」と表しても良かったはずです。バランスの取れた考え方ではなく、一つの方向に寄った考え方のことを示すため、「片寄る」と書くのがぴったり来る気がします。しかし、漢字を輸入する際に、「偏」という一つの字で同じ考え方を表すものがあったので、それを採用したのではないでしょうか。同じ様に「顧みる」は「返り見る」、「導く」は「道引く」、「彩る」は「色取る」、「陥る」は「落ち入る」、「免れる」は「間逃れる」、「耕す」は「田返す」のように、漢字一字にしては妙に音が多いな、と思うものにこの傾向がある様に思います。


もう一つ漢字の多さを表す例として、「あう」と読む漢字を取り上げてみることにします。「あう」には、「合う」「会う」「逢う」「遭う」「遇う」と5つの漢字があり、少しずつ意味が違います。例えば「遭う」というのは比較的悪いことに出くわす意味、「逢う」は良いことに、という違いがあります。しかし、元々やまとことばの「あう」というのは、良いも悪いも関係なく、何かに巡り合ったり、二つの物や人がお互いに合わさるという意味の言葉だったのではないでしょうか。一つの出来事に善悪や良し悪しという観念を入れるかどうか、文化的な背景や、哲学的な要素が絡んでくる気がします。例えば事故に「遭った」として、一般的にはそれは悪い事ですが、その出来事によって、その後人生に対する考え方が変わったとか、家族のありがたさが分かったとか、長い目で見れば、良い出来事と思うようになるかもしれません。


逆に漢字が少ない場合はないでしょうか。

私がすぐに思いつくのは、「生」という漢字です。音読みでも「せい」「しょう」とありますが、訓読みだと「なま」「いきる」「うまれる」「はえる」「おう」などかなり色々な読み方ができます。これは中国では全てが命や生命と関係があるということで、一つの漢字で(もしくは一つの言葉で)表していたのかもしれませんが、日本語では音が違うため、「毛が生える」というのと「自分の人生を生きる」というのでは、ずいぶん違った事象のような感じがします。これはむしろ漢字が少ない例じゃないでしょうか。それぞれ別の動作なので、別の漢字があったほうが良い気がします。

その他にも「潜」は「ひそむ」「もぐる」「かくれる」「くぐる」などの色々な訓読みがありますが、やはり「ひそむ」というのと「もぐる」では、ずいぶん違った動作という気がします。これも、元々のやまとことばに対して、輸入した漢字が少なかったという例のような気がします。


漢字が多すぎても、少なすぎても、学習者にとっては悩みの種ですね。一つの動作に、それぞれ違った一つの漢字を使って欲しいという声が聞こえて来そうです。


絶望的(ぜつぼうてき)hopeless

載る(のる)appear

既に(すでに)already

盛り上がる(もりあがる)rise

難読(なんどく)difficult to read

偏る(かたよる)one-sided

顧みる(かえりみる)look back

導く(みちびく)lead

彩る(いろどる)colorize

陥る(おちいる)fall into

免れる(まぬがれる)escape

耕す(たがやす)plow

絡む(からむ)entangle

 
 
 

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